イリーナ・メジューエワコンサート いずみホール 2019.5.12

どうしても聴きたかったイリーナ・メジューエワを、福岡からの帰り道、大阪で当日券を購入して聴きました。

昨年、久しぶりにヴィルサラーゼを聴きましたが、メジューエワは、多彩な音色とロシア直系のダイナミズムを持ったピアニストでした、ヴィルサラーゼを思い起こさせるような・・・。でも、少し違います。

メジューエワは、徹底した学究派なんだなと思います。子どもの領分はあまり面白くなかった、でも、ワルトシュタインはもう、二度と聴けないかもというほど、見事な説得力でした。

音楽的な説得力って、構造が見えるということとくっついています。で、メジューエワはアンコールの小品に到るまで全て楽譜を持ち込み、しかも、ちゃんと見ながら弾く。つまり、「今、ここ」の楽譜を再現するということにものすごい集中力を発揮するピアニストなんだと思いました。

そして、「今、ここ」を丁寧に表現することで、構造が見えてくる。優れた楽譜もテキストも、無味乾燥に全体を俯瞰して、それに線を引いていくような作業とは無縁な形で、感動と喜びを体を通して表現していくことで、ちゃんと構造も見えるようになるんだと、頭をぶん殴られるような実感がありました。

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逆に言えば、構造を読むなどと言い募って、無味乾燥な構造分けを繰り返す国語教室にせよ音楽教室にせよ、それが、喜びや悲しみや驚き、表現の本質に届いたりしないんだよな、ということ。その前のそもそもの感動と、今、ここを読み取る想像力がなければならんのだな、ということ。そういうことを思いました。

メジューエワ、日本を選んでくれて、ありがとう。きっとここからさらに何十年かの時間をかけて、孤高の世界へとたどり着いていく可能性のあるごくごく一握りの才能なんだな。