真珠まりこ『ゆめねこ』 あさひかわ新聞 2019/6/4号「こどもの本棚」原稿

あさひかわ新聞「こどもの本棚」 2019.6.4 掲載。

不定期で連載しているコーナーです。今回取り上げたのは、真珠まりこさんの『ゆめねこ』(金の星社)です。

ゆめねこ

ゆめねこ

 

以下、掲載本文。

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実は、最初、この絵本あまり感心しなかったのです。

何しろ夢オチの流れは、典型的なお話のパターンです。まあ、ステレオタイプだよなあ、と。そもそもぼくは最後のオチは、もう最初の2、3ページで気がついてしまっていました。そして、本当にその通りだったので、ちょっとがっかりだったのでした。なんだかなあと思ったりしたのです。

でも、違うんだよなあ、こういうのは。

頭でっかちのぼくがガツンとされた感じになったのは、試しに読み聞かせた小学校1年生の教室で、子どもたちがこの絵本を大歓迎だ、という事実でした。

まず、絵が大きいので、読み聞かせ映えする。読み聞かせることをちゃんと考えている絵本だと読みながら気がつきました。特に低学年までの子どもたちはこうしたキャラクターを立てるタイプの絵本をとても喜ぶのです。

そして、何よりも、例のオチ。ぼくにはステレオタイプにも思えるオチに、子どもたちは、うわあとか、なんでーとか、嬌声をあげて反応するわけです。びっくりするのですね。考えてみれば、そうだよなあ・・・。

物語をたくさん消費してきてしまったぼくは、時々先回りをして勝手に絵本の価値付けをしてしまうところがあるようです。典型的な物語の構造をたくさん身のうちに溜め込んでいくまで、じゃぶじゃぶと読み聞かせをしてあげたいという、そういう当たり前のことが、時々頭でっかちに駆逐されそうになってしまいます。子どもたちと読み聞かせを楽しむ現場がいつもたくさんある今の状況を、心から感謝しなくては、と、改めて思いました。

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