カレルチャペック(阿部賢一訳)『白い病』(岩波文庫、2020)

  書評や感想はほとんど公にしないが、この戯曲には久々に痺れた。

白い病 (岩波文庫)

白い病 (岩波文庫)

 

 たしかに、何者も幸せにしないラストに暗澹たる気持ちになる。衆愚への鋒に目眩がする。

 しかしそれを最初の緊急事態宣言下で訳出しようとする訳者、それをネットで議論し支えた賢明なる市民、編集者。そういういわば人文科学・文学の力を信じる人々がいるということに勇気がわく。そうした人々の連綿と続けられていく行為そのものに希望を見出す。

 岡和田晃さんのタイムラインで多分新訳の存在を知ったのではなかったかと思う。

 ぼくもささやかだがその行為のつながりの中に自分を接続したいと思う。コロナ下で起きている問題は安っぽいジャーナリズムの言葉などではない圧倒的な想像力を喚起するこうした文学の言葉で伝えたい。そう思う。