高関&竹澤&札響。秋山&小菅優&札響。鈴木祥子。藝大フィルハーモニアなど・・・4月のアート

4月から、例によってアートは苦しい。

それでもまんぼうも宣言も出ない札幌で、札響を二回。

まんぼう下の東京狛江で鈴木祥子を。

そして藝大フィルハーモニア管弦楽団を藝大奏楽堂で。

札響は、それぞれ、ムストネンの代演。バーメルトとラーンキの代演。

竹澤さんは、以前聴いたのも札響で、その後亡くなったジェルジ・パウクの代演でした。その時はバルトーク2番。パウクのもっとも得意とする楽曲だったので残念だったけれど、竹澤の充実ぶりは際立っていてとても感動した記憶があります。今回は、予定通りならベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のムストネンによるピアノ編曲。そもそもそれなら足を運ばなかったのですが、竹澤が原曲を弾くのなら、ということで。これはもう堂々圧巻。音色の多彩さと充実の音量、ここぞというところでの大見え、安定した技巧。大満足でした。高関さんのシェエラザードも良かった。ペルトのブリテンへのカントゥスはライブで聞く機会はないだろうと思っていたので、嬉しかった。

秋山&小菅による代演となった定期は、最初のフォーレがなんとも全然ダメでしたが(やっぱりもっと小さな編成でこの曲は聴きたいかな)、小菅さんのバルトークはもう圧巻の名演。小菅さんは世界でキャリアを積む、内田以来本格的に世界のトップで弾いていくピアニストになる(なっている)と思いました。オケを凌駕する音量。弱音に至るまでの音色の多彩さ。前にBBC響とのラフマニノフ2番を聴いた時もすごいなあと思ったのですが、今回はもうその充実ぶりに圧倒されました。死ぬまでにどうしても良い演奏で聴きたいと願っていた曲。オケも良かった。久しぶりにうっすら泣いてしまいました(エリシュカ&大阪フィルのフェアウェルコンサート以来だと思う)。多分、ラーンキはこの曲のスペシャリストだけれど、ピアニストとしての格は今や小菅さんが上だろうと思いました。秋山さんのストラヴィンスキーもすごかった。ほとんど演奏されることのないこの曲、おそらく秋山さん自身もほとんど振ったことのないだろう曲を、プログラムを変えずに演奏し切るのはまずすごい。それだけでなく、若いストラヴィンスキーの気負い、ほとばしる若さ、スラヴ魂・・・見事な青さで表現して大感激でした。秋山さん、すごい。

藝大フィルは、吉井さんのオーボエの柔らかく温かい音がR.シュトラウスの晩年の境地の表現に見事にマッチングしていて、聞き惚れました。というか、藝大フィルハーモニア、恐ろしく上手でした。アンサンブルの精度は在京のトップオケに引けを取らないと思います。山下さんのチャイコフスキーも実に立派な演奏。骨格がしっかりし、細部がよく見通せるクリアな演奏。クライマックスに向かっての推進力も十分でした。札響と同じペルトがプログラミングされており、弦楽合奏の質は札響と肩を並べる感じ、ということは札響は僕が近年感じているように在京トップに肩を並べる水準に近づいているとも思いました。こちらの解釈は、高関・札響の方が良かったかな。鐘がより印象深く、表現・音像のダイナミズムは札響の演奏が良かったと思いました。

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鈴木祥子さん。1年三ヶ月ぶりのライブだそうです。40人ほどの小さなライブ会場。圧倒的な男性率でびっくりしました。古くからのファンも多く、アットホームなステージでした。祥子さんは、僕と同じ年代を代表する天才アーティストで、もちろんこれまで生きにくい事態にもたくさんぶつかりながら歩いてきた人です。今回のステージはその天才のリハビリにみんなで付き合っているようでもあり(笑)、でも何というか雨上がりの空の下を鼻歌を歌いながら小走りするようなそんな時間でした。東京でどうしても聴きたいと持っていたアーティスト、一人また一人と聴いていき、ぼくの人生もまた折り返しを過ぎて終盤に入ってきたんだな、そんなことを思いながら、でも、温かい気持ちになりました。