最近読んだ本から その30

苅谷さんの、「自分は誰とも違うんだよ」的な高踏的な書きぶりに、馬鹿にされたような気持ちになったことのある人はぼくだけではあるまい。しかし、今作も圧倒的な読書量・洞察力、完敗の一冊だった。彼の本は、新書を読んで読んだ気になったりしてはいけない。

今年の教育書では一番かも知れない。コロンブスの卵の一冊だった。「今までもやっていた」と、簡単に言ってはいけない。丁寧に調べてみると、特別支援学校の学習指導要領解説の中には、自立活動について、この本の発想を支えるような考え方が示されているようである。とはいえ、こうした考え方は通常学級においてはほとんど一般化されていなくて、その点で、土居さんがここを全面的に押し出してくるのは、ある種の発見、革命的だ。ぜひみなさんに読んでほしい本である。

待ちに待った一冊だった。ありがたいありがたいと思う。

斉藤ひでみさんの仕事をリスペクトしている。しかし、一方で斉藤さんは既に名もなき教師たちの代弁者ではないとも思う。この本には、本当の意味での「現場実践者」は誰もいない。教師のバトンで起きた大惨事をちゃんと語っていい人はどんな人(たち)であろうか、と、深々と考える。

毎日読むは、難しかったが、一年をこの本と過ごした。