アートを旅する 2022年5月

ヒラマ画廊収蔵品展(ジュンク堂旭川展ギャラリー)

老舗の画廊が「収蔵する」と決める作品ってどんな基準があるのだろう。旭川にゆかりの深い作家たちの小品がたくさん展示されていジュンク堂旭川のスペースを総覧しながら、そんなことを思う。盛本さんに出会ったのも、今はなきヒラマ画廊だった。

 

パシフィックフィルハーモニア東京(サントリーホール

久しぶりのサントリーホール飯森範親さんの音楽監督就任と団の改名のお祝いをかねた定期公演。牛牛のチャイコフスキーの一番はものすごい音量でしかも癖のある緩急。20世紀中盤のホロヴィッツなどの往年のアクロバティックでコテコテのロマンティシズムに通じる妙演だった。かっこいい。アンコールに運命一楽章ピアノ版。これはもうお祭りだ。メインのショスタコーヴィチの一番は飯森&山形交響楽団で聴いている。解釈は大きく違わないが、緊迫感と各パートの精度、そして音量。今回は大熱演だった。マザーシップ(メイソン・ベイツ)は、祝祭にふさわしい楽しい曲。 高木凛々子さん、藤原道山さん、そしてマーティ・フリードマン+牛牛。贅沢なステージだった。


OFC最終公演”カルミナ・ブラーナ”(東京文化会館大ホール)

キテレツな合唱舞踊劇。以前から気になっていたが今回でこの企画自体閉じるらしい。間に合った。東京シティフィルの演奏も素晴らしく、感動してしまった。佐多達枝の執念の舞台。佐多は稲子さんのお嬢さんなんだな・・・。ただ、客は色々。学芸会の応援のノリできているらしい方々はずうっとお菓子を開く音を立てている。身内が出ると喋り出す 笑 合唱は大健闘。でも、かつて北海道で群衆劇に合唱団キレンジャクとして挑戦した経験から言うと、パフォーマンスはバレエやオケに比べるといささか見劣りするかな、歌も。それにしても数年ぶりのカルミナ・ブラーナは、心に響いた。人間とはどうしようもなくだらしなく情けなく魅力的だ。

 

ザ・ニュースペーパー(なかのZERO小ホール)

久しぶりのニュースペーパー。おじさんたちの風刺コントは健在。客の驚くほどの高齢化も見事。風刺が表現としてもっと広く認められるといいのだが。とにかく政治家が小粒なのである。政策もまるで話題がなく。みんな知ってるのは、ウクライナとロシアの戦争と皇室のことばかり。政治の中身が空虚なので、形態模写的アプローチで笑わせたり、趣向を凝らして政治そのものではないところで笑わせたり・・・。風刺しようもないほどトピックも湿り、話題にも乏しいこの政治の現実をどうしたらいいもんか。

 

Orchestra Canvas Tokyo(杉並公会堂

この日は札響を聞こうと思っていたが、ちょっと疲労も大きく、北海道行きは断念で、せっかくなので、このアマオケのチケットを確保。

オールラフマニノフプログラム。

死の島、ピアノ協奏曲3番、交響的舞曲。

岡本陸さんの指揮は、交響的舞曲のパートごとのクリアな炙り出し、振幅の大きな表現・音量。見事。

角野未来さん人気もあって、ほぼ満席。角野さんは、洗練された音色で十分良さを見せたが、若干の音量不足と、スタミナ不足。3楽章はやや単調でミスタッチも。一楽章が素晴らしかったので、ちょっとばてちゃったかな。死の島は、難しいね・・・。それにしても関東圏の大学 オーケストラOBによるこの新しいアマオケの技量は高い。思わず聞き入ってしまう瞬間も何度かあった、

 

クライネスコンツェルトハウス管弦楽団杉並公会堂

数日前、ここでアマオケを聴き、技量の高さに舌を巻いたのだが・・・。一級のプロオケは圧倒的だ。35名弱の最小編成だが、とにかく美しく鳴る。響く。ザ・グレイト&運命。とにかくその湧き上がるようなうたごころ、一人ひとりの圧倒的な存在感、表現者としての自発性。今回も衝撃的だった。日本にもこんなチームがあるんだなとうれしくなる。アンコールはヨハンシュトラウス! 観光列車も美しき青木ドナウも、演奏する喜びに満ちていた。