アートを旅する 2022年12月下旬

・ナタリーワイズ&湯川潮音(下北沢CLUB Que)

 ヘッドホンで聴いているとどうにもフィットしなかったナタリーワイズ。やはり生で聞くべきなんだな・・・。BIKKEの語りかけるような不思議なラップと他メンバーの音との重なりが生む芳醇な世界に段々とハマっていった。高野寛さんはひたすら素敵だった。湯川潮音は新作がいつものようにフィットせず(彼女の作品はずうっと後で気に入ることが多い)、どんな感じかなと思っていたが、これも圧巻の歌声だった。ごめんなさい、痺れました。

・光の芸術家 ゆるかわふうの世界 宇宙(そら)の記憶(そごう美術館)

全く期待しないで出掛けたこの展覧会はかなり面白かった。スタイロフォームを主には微妙にハンダゴテなどで削り、それに裏からLEDを通すことで、繊細な生き物の世界(最近は肖像画などにもチャレンジし、藤田ニコル肖像画とかとても面白かった)を表現する。スタイロフォームなんて壊れやすいわけだし、LEDがないとただの発泡スチロールのようなものなわけで、これは着想もまた、現代社会・アートの比喩としても秀逸で、ちょっと見入ってしまった。

 

山中千尋トリオ(COTTON CLUB東京)

 今や日本を代表するジャズピアニストの一人。初めて実演に接したが、バラードメインで彼女の音楽を聴いてきたこともあって、イメージが一新された。音量も十分で、しかも大変なテクニシャン。とにかく音数が多いので、ちょっと情報量そのものに圧倒されてしまう感じもあった。いつかのハワードジョーンズ以来久しぶりの会場。いい雰囲気だな、東京は豊かな場所だ、お金さえあれば。

三沢市寺山修司記念館(青森県三沢市

念願かなって寺山修司記念館。今回は彼が初期に手掛けたというラジオドラマの脚本の再現パフォーマンスもあり、充実の来訪だった。ぼくを含めて7人くらいの客。勿体無いが、それでいい気もする。小川原湖周辺の荒涼とした風景も、似つかわしい。恐山にも行きたいなあ、展示室の引き出しがいい。田園に死す、なんだよね、これは。