ウィーンの現役現在最高のピアニストの一人と目されるヴラダーを聴きました。
悲愴、月光、ワルトシュタイン、熱情。
前半の悲愴、月光ははっとする解釈、楽曲によって、楽章によって使い分けられる音色にはっとさせられるものの、ディスクで聴いたような清新さとは違うどこかくぐもった感じ。ミスタッチも目立つ。
一曲目開始早々に、ホールのど真ん中にすわっている客が、たくさんのビー玉を転がしたかと思うような「生活音」、さらに無遠慮な咳払いも続き、聴くぼくらも、ピアニスト自身もどこか集中を欠いたのかな、それともこんなものか、と思っていました。
後半のワルトシュタインからは別人。特に熱情は詩情あふれる二楽章、清新で小気味よい歌と力強さに満ちた三楽章、圧倒的な演奏でした。これぞ本物。
アンコールの、リストのコンソレーションの3番は絶美。
前半と後半でまるで違う演奏家の姿に接したかのような、ちょっと当惑するコンサートにもなりました。
浜離宮朝日ホールは、もっとよい音響のホールなのかと思っていましたが、ちょっと残念。少し後ろ目に座ったこともあるのかも知れませんが、ステージに向かって左手前の非常灯付近が終始びりびりといやな震えを聴かせて、ちょっと不快でした。
7割5分くらいの入り。