音楽で人を「動かす」という話

かつて浜辺の比較的大きな中学校に勤務していた。中1の学年主任だった。若い女性の担任から給食をだらだら食べてなかなか片付かないという相談を受けた。そこでオッフェンバックの天国と地獄序曲を片付け開始時間に流してみようという話になった。果たしてあのフレンチカンカンが教室に流れはじめた瞬間に子どもたちは猛速で片付け始めた。

彼女はその様子を半ば呆気に取られて、ギャハハと笑いながら見ていたが、後でぼくに、あれはダメですね、とニコニコ話してくれた。ぼくはこの先生は信頼できるなあと感心した。教師としてのまっとうな精神・感覚・センスってなんというかこういうところに表れるのだと思う。早く終われば良い、効率が良ければ良い、そういう中で人を操作する方法が、どんどん広がっていくのをどう押し止めればいいのかなぁ。歴史や記録から切れてしまった実践も実践者も、そこに責任がないとは思っているのだが、朝からかなりつらい。