最近読んだ本から その43

いろんな本を読んでいるが、なんと言ってもここしばらくの大ヒットは、芦田宏直シラバス論』(晶文社)だった。

芦田さんのフィールドである大学や専門学校のシラバス(カリキュラム)についての論述なのだが、これはぼくが関わる初等中等教育にもそのまま言える指摘なのだと思った。ぼくのようなワークショップ、ファシリテーション、協同学習を熱心に推進してきた人間としては、もう一貫して耳の痛い話のオンパレードで、最高に楽しかった。

とはいえ、芦田さんに叱られちゃいそうだけど、その指摘は、多分もう後戻りできない時代の徒花である。ぼくらの国の学校教育は(教員採用は)もう底が抜けてしまったんだもの。芦田さんの指摘に真っ向から向き合える初等中等教育の教員なんて、もうほとんどいないだろう。

でも、そうした中でも、馬鹿なsociety5.0やらを鵜呑みにしたり、生徒指導のスカート丈を測るようなルーブリックに走って沈没を早めないように飲み干さなくちゃいけないドクダミ茶みたいな本だと思う。ドクダミ茶と書いたけれど、芦田さんの文章は本当に読みやすい。よくわかっている人だけが到達できる境地の文体だ。博覧強記な注釈や巻末注がまた実に楽しく知的好奇心を満たしてくれる。さあ、みんな読みましょう。

 

三浦幸司『「銀河鉄道の夜」の謎を解く』(寿郎社

日本児童文学者協会北海道支部を長年支えてこられた三浦さんの本。銀河鉄道の夜に今ひとつ心を動かされないぼくだが、丁寧な謎解き型の評論は、とても面白かった。これは「銀河鉄道の夜」の入門書としても、宮沢賢治作品を教える一人の教師としても、読みやすく、しかも説得的である。