教師教育を考える会メールマガジン 2017年6月20日 第2号

2017年6月20日。2号。ぼくが書きました。
 
 
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メールマガジン「教師教育を考える会」2号
               2017年6月20日発行
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 「民間教育団体」という地点から、「教師教育」を考える
  NPO法人授業づくりネットワーク理事長、
  元・北海道公立中学校教諭
                     石川 晋
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 いよいよスタートです。最初ということで、今号は編集代表の私(石川)が、民間教育団体と教師教育という視点で、少し書きます。(石川 晋)
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1.感謝
 16日発行の創刊号は1893人の読者からのスタートでした。
 なんと、この第2号の配信数は2248人。350人もの方が、新たに購読の登録をしてくださったことになります。感謝です。小さくても大切な動きを、このメルマガから作り出していけたら、と考えています。引き続き、どうぞご支援ください。
 創刊号でライター予定の方のお名前を列挙しました。ライターのお声がけは、私が現場実践者であるということから、どうしても実践者寄りになっています。ただ、教師教育に関わる研究者の方。また、まだ広くは知られていない若手の活動家。さらに、保育や学童、司書などの専門領域を持った方。学校を外から支援する動きを丁寧に創っていこうとしている方など、できる限り多様な方に執筆いただこうと考えました。
 メールマガジンは、テーマを掘り下げて考える媒体としては不向きと考えていましたので、多様な視点から、読者のみなさんに、このテーマに登っていただくということを企図しました。それぞれのライターの登り口の多様さを、みなさんと楽しめたらなあと思っています。私も、わくわくしています。
 今号は、少し荒っぽいのですが、私の問題意識を、ほうりこんでみようと思います。
2.NPO授業づくりネットワークという場所から考えてきたこと
 私は、この3月末まで28年間、北海道内の公立中学校で勤務してきました。途中極小規模校の小中併置校勤務や一年間の育児休業取得などをはさみながらも、一貫して普通の公立中学校教諭として仕事してきました。
 その中で考えたいろんなことは、『学校でしなやかに生きるということ』(フェミックス,2016)にある程度まとまった形で書き記しました。同じ出版社から出ている隔月刊誌「we」に連載した記事をまとめたものです(ちなみに連載は今も継続しています)。
 そういう公立学校の普通の教員としての生活とともに、自分の教育活動を説明する上で避けて通れないものが、民間教育団体での活動です。私が今理事長を務めるNPO法人授業づくりネットワークは、同名の雑誌(ムック)を学事出版から今は季刊で発刊しています。また、団体として全国の教職
員を主な対象とした教育研修講座の提供をしています。また、私は教員になる前後から、授業づくりネットワークはもちろん、様々な民間教育団体の研修活動に参加してきました。また、各種団体の機関雑誌などへの執筆や研修発表の機会もいただいてきました。
 民間教育団体の魅力の一つは、学校文化にとらわれない自由な発想に基づく実践提供・交流があることだと考えます。そして、一流(中にはカリスマと呼ばれるような方も)の教員に、参加者が比較的間近に接することができることも挙げられます。特に一流とされる実践者の多くは、実践もさることながら人間的にも魅力あふれる人物が多く、実際こうした場所で学ぶ多くの若手教師たちは、こうした講師の魅力に触れ、あの先生のようになりたいという願いや夢をもって「修業道」に励んでいったりします。
 しかし、結論から言ってしまえば、そうして集まってくる若手のほとんどは、彼らが師と仰ぐカリスマ教師のようにはなれません。それはそうでしょう。彼らには、それぞれ突出したセンスや技能があると見るべきですし、だからこそ「カリスマ」でもあるわけです。カリスマに学ぶということが、カリスマを目指すということと同義になりがちな点が、特に2000年代以降の民間教育団体が創ってきた学びの場の大きな弱点です。
 そもそも学校は協同で仕事をしていく場です。ですから、突出した技量の持ち主がぐいぐい牽引していくことよりも(時にそういうことが必要な場面もあるでしょうが)、教師一人ひとりが自分の実践を省察しながら、技量を高めていく。そうすることで、全体のアベレージが上がっていくと
いうことが、重要でしょう。そういう視点から考えると、私が30年近く注力してきた民間教育研究の場というのは、どのような役割を果たしてきたのか。また、果たしているのか。今、若手ベテランを問わず、教員の苦しい状況が報告されることが多い中で、十分に検討されなければならないところにあると感じています。
 実は、民間教育団体での学びは、それが日常を支援するものになりにくいという課題を一貫して抱えています。これは、公的研修が継続的に支援できることと比較すると、大きな弱点です(もちろん公的研修も必ずしもこの強みを生かせているとも言い切れないわけですが)。私も、たくさんの研修会、セミナーを企画してきながら、そこに集まる教員の日常があまり変わっていないのでは、という悩みをずうっと感じてきました。日々の授業、クラス運営で苦しむ教師を、民間教育団体の研修活動は救うことができるのか。それが、私にとって、この世界に長くいればいるほど、重ぐるしい問いとなっています。
 そういう問題意識があって、私は、民間教育団体での学びと校内での学びとが切り結ぶ仕掛けを創ろうという方向に、心を傾けました。それが、本メルマガでも執筆をお願いしている大野睦仁さんとの共著『笑顔と対話があふれる校内研修』(学事出版,2013)の中で報告をした校内研修実践です。私は2000年ころから、校内研修を協同ベース、ワークショップペースで実施していくことを丁寧に考えてきました。この方法はかなりの程度有効でした。特に、若手の教員が自分の考えや思いを校内である程度自由に話ができるという環境確保は重要でした。
 しかし、特に2010年以降、それだけでは難しいということも、はっきりと見えてきたように思います。
 事情は複合的で、簡単には説明できないのですが、大きな変化が起きつつあると現場で感じていました。私の場合は、この問題に、校内研修にたくさんの講師を外部から呼び入れるということで対応しようとしてきました。これは民間教育団体での活動が生かされているという意味で、両者の融合の幸せな例ということもできますが、これでいいのだろうかという不安はいつもいつもありました。
 私は今、若手教員が創る小さな研修会の動向に注目しています。例えば、採用の決まった若手を集め、彼らに話したいベテランの参加を募って実施する(ベテランから参加費を取ります)セミナー。カリスマ教師を講師として招いてはいるものの、最初から懇親会の会場でワイワイ話すセミナー。
コンテンツベースで(例えば公民教育や食育、プログラミング教育や小学校外国語活動などのテーマについて)、参加者それぞれが考えを持ち寄るセミナー。読書会形式の研修会。これまでの研修会・セミナーとは何かが違う新しい動きを感じています。
 やや中途半端ですが、今号はここまでです。
 一年間のメルマガ編集の中で、私の学びも深まり、このもう少し先までお話しできるようになれるといいなあと考えています。
3.執筆陣及び執筆予定
 今号からの新規の読者の方が多く、また、執筆陣のプロフィールの変更も少しありましたので、再掲します。
6月16日金  石川晋(NPO法人 授業づくりネットワーク理事長/元・北海道公立中学校)
6月20日火  石川晋
6月27日火  杉本直樹さん(大阪市立上町中学校教諭)
7月4日火   町支大祐さん(東京大学マナビラボ 特任研究員)
7月11日火  宮田純也さん(「未来の先生展」実行委員長)
7月18日火  梶原末廣さん(インターネット編集長/「中・高教師用ニュースマガジン」編集・発行人)
7月25日火  木下通子さん(埼玉県立春日部女子高校司書/ビブリオバトル普及委員)
7月28日金  藤原友和さん(函館市立万年橋小学校教諭)
8月2日火   阿部隆幸さん(上越教育大学教職大学院准教授/NPO法人 授業づくりネットワーク副理事長)
8月4日金   鍋田修身さん(島根県隠岐島前高等学校常勤講師)
8月6日日   岡崎勝さん(名古屋市立小学校非常勤講師/学校マガジン『おそい・はやい・ひくい・たかい』(ジャパンマシニスト)編集人)
8月11日金  武田信子さん(武蔵大学人文学部教授)
8月15日火  杉山史哲さん(ミテモ株式会社/学校働き方研究所)
8月18日金  ちょんせいこさん(株式会社ひとまち代表) 
8月22日火  上條晴夫さん(東北福祉大学教授)
8月25日金  赤木和重さん(神戸大学大学院)
8月29日火  大和信治さん(EDUPEDIA編集部/NPO法人 Teach For Japan外部講師)
9月1日金   荒木寿友さん(立命館大学教職大学院
9月5日火   館野峻さん(品川区立義務教育学校教諭/Teacher’s Lab.理事)
9月8日金   住田昌治さん(横浜市立永田台小学校校長/ユネスコアジア文化センター事業推進委員)
9月12日火  田中雅子さん(東京都立中野特別支援学校主任教諭/特別支援教育コーディネーター/認定ワークショップデザイナー)
9月15日金  木村彰宏さん(株式会社LITALICOジュニア事業部ヒューマンリソースグループ/NPO法人 Teach For Japan採用・研修担当)
9月19日火  渡辺光輝さん(お茶の水女子大学附属中学校教諭)
9月22日金  矢野博之さん(大妻女子大学教授/REFLECT理事)
9月26日火  横山験也さん(株式会社さくら社代表取締役社長)
9月29日金  高田保則さん(北海道公立小学校通級指導教室教諭/オホーツクADHD&LD懇話会副代表/オホーツク子どもの発達サポート教育研究会副会長)
10月3日火  加茂勇さん(教科研「発達障害と教育」部会世話人新潟県公立小学校教諭)
10月6日金  千葉孝司さん(音更町立音更中学校教諭/ピンクシャツデーとかち発起人代表)
10月10日火 長尾彰さん(NPO法人 EFC代表理事
10月13日金 柴崎明さん(横浜市内私立中高一貫校教諭/教員と教員志望のためのサークルTサークル代表)
10月17日火 大野睦仁さん(札幌市公立小学校教員/教師力BRUSH-UPセミナー事務局)
10月20日金 松下音次郎さん(森のようちえん ぴっぱら)
10月24日火 蔵満逸司さん(琉球大学教職大学院・作家)
10月31日火 田中光夫さん(フリーランスティーチャー)
11月14日火 糸井登さん(立命館小学校教諭/明日の教室代表)
11月21日火 寺西隆行さん(ICT CONNECT 21 事務局次長)
11月28日火 北見俊則さん(一般社団法人 志教育プロジェクト専務理事/前・横浜市上永谷中学校校長)
12月5日火 斎藤早苗さん(元・愛知県小牧市立小牧中学校PTA会長)
12月12日火 前田康裕さん(熊本大学教職大学院准教授)
12月19日火 妹尾昌俊さん(学校マネジメントコンサルタント/学校業務改善アドバイザー(文科省委嘱))
12月26日火 青山新吾さん(ノートルダム清心女子大学人間生活学部児童学科准教授)
1月9日火   武田緑さん(一般社団法人 コアプラス代表理事
1月16日火  多賀一郎さん(追手門学院小学校/教師塾・親塾主催)
1月23日火  梶川高彦さん(愛知県東浦町立生路小学校教諭/教師の学びサークルほっとタイム代表主宰)
1月30日火  江口彰さん(NPO法人 いきたす代表理事
2月6日火   関田聖和さん(神戸市立松尾小学校教頭)
2月13日火  松田剛史さん(北海道大学大学院/ソーシャルベンチャーあんじょう家本舗代表)
2月20日火  池田修さん(京都橘大学発達教育学部児童教育学科教授/明日の教室代表)
2月27日火  鈴木美枝子さん(いわき短期大学幼児教育科教授)
3月6日火   俣野秀典さん(高知大学地域協働学部/大学教育創造センター講師)
3月11日日  佐々木潤さん(宮城県公立小学校教諭/東北青年塾スタッフ/あすの社会科を考える会主宰)
3月13日火  山本純人さん(埼玉県公立中学校教諭/俳句結社「梓」同人)
3月20日火  岩瀬直樹さん(東京学芸大学教職大学院准教授)
3月23日金  佐藤年明さん(三重大学教育学部教授・教職大学院兼担)
3月30日金  塩崎義明さん(浦安市立高洲小学校教諭)
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 次号は、6月27日火曜日。杉本直樹さん(大阪市立上町中学校教諭)です。もちろん、「部活動」視点からのご執筆です。ご期待ください!
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メールマガジン「教師教育を考える会」
2号(読者数2248)2017年6月20日発行
編集長:石川晋(zvn06113@nifty.com)
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