松岡享子さんにはたった一度だけお会いしたことがある。それはどらねこ文庫(つまりぼくの家で開設されていた家庭文庫)に、彼女が訪問した折だった。彼女は、多分、伊藤忠財団との協同で、日本中の文庫活動の現場を取材訪問して、事実上1対1で聞き書きをしていたのだと思う。ぼくはたまたまその現場に居合わせた。
母が子どもの本の活動に関わって涙を流す場面を見たのは、ぼくにとってはたった2回しかない。そのうちの一回が、その日のその場面だった。
松岡さんの本を読むのは久しぶりだった。子どもと本の活動に向き合ってきた一人一人に沁みる、そして背中をそうっとさすってもらえる、そういう珠玉の言葉に満ちた一冊だった。
多分この本が、その時の取材などを含めた一連の動きをまとめたものなのだが、購入したまままだ読めていない。