190319あさひかわ新聞連載「くんちゃんのはじめてのがっこう」

くんちゃんのはじめてのがっこう ドロシー・マリノ まさきるりこ

ペンギン社 

くんちゃんのはじめてのがっこう

くんちゃんのはじめてのがっこう

 

先日、関西のある小学校の1年生に読み聞かせしました。2月末から3月は、小学校1年生にとって、自分たちが後輩を迎える準備をしていく季節でもあるのです。この絵本は、タイトルの通り、熊のくんちゃんがはじめて学校へ行く日を描いた作品。読み始めに、子どもたちに、「入学の時のこと覚えてる?」と聞くと、「覚えてる・・・めっちゃ楽しみやったねん」「なんかお腹痛くなった」というような子もいれば、「全然覚えてへんわ」という子も・・・。小学校1年生、こんな感じですよね。

さて、少しざわざわした教室です。でも登校の楽しい様子に引き込まれ、くんちゃんが教室でだんだん不安になっていく辺りになっていくと、ググッと静かになって、自分とくんちゃんとを重ねて聴き浸っているようです。飛び出してしまうと、「ああ」という声。失笑。1年生も失笑するんですよ。その後のユーモラスな展開も授業のさりげない質の高さと相まって、見事な絵本です。

読み終わった後、隣同士の子どもたちで、心配な気持ちで入学してくる1年生にどんなことしてあげたいかお話ししてみようかというと、あっという間に話しこんでいきます。この時期、ぜひ小学校の教室で読みたい絵本ですね。

大人であるぼくは、この絵本を読むといろんなことに気づかされます。

例えば、授業が普通に異学年で行われていくこと。それよりも何よりも入学式みたいなものはなくて、いきなり授業が始まること。保護者は初日でも子どもを置いてさっさと帰ってしまうこと。

本の学校のしきたりが、世界の学校のスタンダードって訳でもないんだな、とよくよく知れる本でもあります。