アートを旅する 2022年10月上旬

○パシフィックフィルハーモニア東京(サントリーホール

話題のかてぃんさんによる日本初演のアデスのピアノ協奏曲。現代の楽曲としては少なくとも聴いている側にとってはずいぶん穏当な曲。最も楽譜は大変らしい。かてぃんさんは完全暗譜、これはすごい! また彼の軽快で軽めのタッチには、とてもと合っている曲で、良い人選だった。客席にはびっくりするほどの若い女性。演奏後のスタンディングオベーション。いいなあと思う。彼は若いクラシックファンをたくさん開拓している。後半は惑星全曲。飯森さんの指揮はこの曲のスペクタクルなところファンタジックなところをよく表現した秀演。東京混声合唱団の面々を開け放ったバックステージの向こうから歌わせるなど、なんというか贅沢なステージだった。プロジェクションマッピングは、うーん、いらないな。前回のマザーシップの時も、まあ本音はあってもなくてもいいなと思ったが・・・。でもこうした試みにチャレンジすることはきっと大切だよなと思う。

琉球交響楽団(オペラシティ)

アジアオーケストラウィークの一環。大友さんの指揮。前半の沖縄に縁故のある作曲家による楽曲は、この楽団が大切にしていこうと思っているスピリットが伝わってきて、すごくいいなあと思う。楽曲自体は特別に感心するという感じでもなかったのだが・・・。萩原麻未を独奏に迎えたラヴェルのピアノ協奏曲は、萩原の独壇場。彼女のどこかアンニュイくぐもった音は、この曲にとても似合っている。萩原、最近何度かいろんな形で聴く機会があるが、いつもとてもいい。後半はチャイコフスキーの5番。パレットにもう少しいろんな色が出ているといいなあと思うけれど、使える色を精一杯使った力演だった。

○東京交響楽団(サントリーホール

ジョナサン・ノットによるショスタコーヴィチの4番は、大変な名演だった。これほどまでに才気迸るショスタコーヴィチの音世界を、一つ一つ熱を持って振り抜いていくノットはすごい。各パートとも超絶な独奏フレーズを歌心を持って表現していて、東京交響楽団、こんなにうまいのかと感心する。ファゴットコンマスの小林さんは特に素晴らしかった。途中第二ヴァイオリンの女性が倒れるという滅多にないアクシデントもあったが、現場の対応は迅速だったと思う。前半のラヴェルは安川の歌声と表現力に好感を持ったが、ぼくの席はステージ後方だったので、論評は避けたい。