アートを旅する 2022年11月上旬

・goog morningno5「赤裸裸」(ザ・スズナリ

ものすごい熱量だった。最高だ。この劇団、客も玄人層も多く支持も高いがtwitterレビューはいつも少ない(ちなみに今日も満席!)。既存の言葉でレビューしにくいんだと思う。かくいうぼくもその一人なのだがとにかく体感した者だけが感じる衝撃痛烈で爆笑の芝居だ。鳥越さんは卓越した俳優だと思うが、その鳥越さんと冒頭から丁々発止やり合うラサール石井さんのこの芝居に賭ける熱が全編を貫く空気を規定していた感じもする。とにかくここで観るしかない、ものすごい芝居だった。


・世界が絶賛した浮世絵師 北斎展 ―師とその弟子たち―(道立旭川美術館)

 北斎の大回顧展だ。彼の有名な作品群をほとんど一望できるような重量感だった。そしてこうしてまとめてみることで、ぼくは北斎がそんなに好きじゃないんだなという自分の感情にも気がついた。それでも名作の数々は、人生の中で必ず見ておいていいものだ。神奈川沖浪裏なんて、もうぼくらの国のアイコンそのものなのだろうね。同時開催の北海道教育大学旭川校の歴代の美術教師に作品を集めた展覧会。これも見応えがあった。朝倉力良さんの雪の絵とか、旭川に生まれ育ったものには、やっぱり格別だと思う。

・日本テレマン協会第291回定期演奏会東京文化会館小ホール)

テレマン室内オーケストラ。ブランデンブルク協奏曲全曲。こんな気軽な値段でトップレベルの演奏で聴ける。東京は気が遠くなりそうな街だと思う。チェンバロの高田泰治さん、ヴァイオリンの浅井咲乃さん、リコーダーの村田佳生さん、素晴らしい。中でも、浅井さんのヴァイオリンソロが素晴らしい。バッハにはもう全てがあるんだな、すごいよ、ほんとすごい。全曲演奏なんて北海道の片田舎では生涯接することのないものだと思っていた。たくさん愛聴盤があるが実演に接して初めてわかることが多すぎるね。バッハの音楽には本当に全てがある。構造もうたも遊びもオスティナートも逸脱もユーモアも。テレマン室内オケ素敵な演奏でした。

・東京シティフィルハーモニック管弦楽団第356回定期演奏会(オペラシティ)

 RVWのタリス幻想曲、ついに聴けたこの曲は絶美だった。シティフィルは十分うまいがそれ以上に藤岡さんの各声部を豊かに響かせる指揮にちょっと感動。

寺田さん渡邉さんの二台ピアノ協奏曲。硬質な楽曲なのに滲み出る年輪にじわっとする。後半のドビュッシーがまた素晴らしい。先日神奈川沖浪裏を見たばかりだが、ドビュッシーの「海」がこれほど美しく聴けたのは初めてだった。大満足。