探究する教室・・・授業づくりネットワークNO.39刊行です

(僕が書いた、巻頭論文から一部分・・・)
井上実践、深谷実践、あるいはかつての「見たこと作文」実践などの授業記録を読めば明らかですが、探究は学校・授業・教科の従来の枠組みを吹き飛ばしてしまいかねない強靭な魅力を持っています。パンドラの筺を開けてしまうような、と言えば良いでしょうか。冒頭でも述べたように、その魅力と難しさは果てしないのです。
そう考える中でぼくが思い出すのは、佐藤広也氏の一連の実践群です。北海道東部の浜中町で八十年代末にスタートした佐藤の「ほう、そうか探偵団」実践は、鈴木正気氏らの社会科探究実践から連なる実践の一つです。佐藤は札幌市の小学校に転出後も探究実践を推し進め、それらの実践は、いくつかの書籍、例えば『子どもたちはワハハの俳句探偵団―俳句づくり・学習実用アイテム』旬報社、1997)『動物園のアニマシオン わくわく探偵団』(柏書房、2004)などでほんの一部に過ぎないのでしょうが、読むことができます。彼の実践を改めて読み返しながら、破天荒だが時として壮絶に追究し続ける子どもたちの姿に心が動かされます。また、会うたびにやんちゃな子どものような表情を見せながら実践を語る佐藤の姿が思い浮かび、「ああ、優れた探究実践は、教師自身が優れた探究者として探究を楽しむ人である時に生まれるのだな」という至極当たり前のことに思い至ります。
昨今の学校・教師が膨大な課題に押しつぶされようとする日々の中で、果たして個々の実践者は、佐藤のように、探究を楽しみ続けられる存在で在れるのか。探究実践の存立は、実践者が自由に羽ばたき続けたあのマインドを今に持ち寄って歩めるかという、実は一番難しい問題とくっついているように思えます。
 
<目次>
探究する教室
【巻頭座談会】
探究を何のために使うのか
奈須正裕×藤原さと×田中理紗×川本 敦
誌上レポート
プロジェクト型学習のリアルとカオス~深谷新教室の「探究」する学び~ 佐内信之
巻頭言1 授業づくりネットワークと「探究」 石川 晋
巻頭言2 『アプレ・クー(事後性)』という未目標―予定調和の無い学びの場 木幡 寛

パート1 どうやる? 探究学習
みつかる+わかるスパイラルで探究をデザインする 市川 力
自分に繋がり、社会に繋がるための探究 青木芳恵
イエナプランスクール大日向小学校での実践~ワールドオリエンテーションの探究~ 原田友美
「算数アドベンチャー」算数の美しさとは? 伊垣尚人
生徒も教師も変わる「質問づくり」〜中学校理科の授業記録〜 井久保大介
〝活動あって学びなし〟に陥らない まだまだ遅くない一人1台端末の利活用と総合的な探究の時間の一歩目 横尾圭二
定時制高校にサリサリストアをつくる~「ふまじめ」な授業づくりが「探究」を加速させる~ 伊藤晃一
子どもたちが地域を変える! ~外部人材と協働したコラボレーション授業~ 菊地南央
探究的な学びとクラスづくり 小川雅裕

特別寄稿
「追究の鬼」を育てる有田和正の授業と「探究」 古川光弘

パート2 「探究」を考えるための本
『見たこと作文でふしぎ発見』阿部隆幸
『授業をみがく─腰の強い授業を』長瀬拓也
『「追究の鬼」を育てる』樋口綾香
『PBL 学びの可能性をひらく授業づくり』京野真樹
『共に学び共に生きる1・2』片岡利允
『ロウソクの科学』『雑草のくらし あき地の五年間』小島章子
『だれもが〈科学者〉になれる! 探究力を育む理科の授業』佐藤充
『子どもの「問い」が立ちあがる』サルバション有紀
『山の村から世界がみえる』藤倉 稔
『「探究」する学びをつくる 社会とつながるプロジェクト型学習』井上太智
センス・オブ・ワンダー』藤原由香里