アートを旅する 2022年9月下旬

アートが足りない。

楽しみにしていたクロノスSQは来日できず、中止。結局ルイージ&N 響のみ。でもその演奏は素晴らしかった。

ルイージNHK交響楽団(所沢ミューズ)

ルイージは数年前のPMFとのマーラー(悲劇的)以来。当時はあまり思わなかったのだが、実に風格のある、指揮ぶり。今回はベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲とブラームスの2番交響曲だった。ベートーヴェンソリストはジェイムズ・エーネス。これまでのN響との共演やCDで、現在最高のヴァイオリニストの一人と感じていたが、もう本物は圧巻であった。エーネスは体幹がしっかりしており、ほとんど揺れのない演奏なのだが、豊かな響きを持ってお理、時に弱音の美しさはこれまで聴いたことのないレベルの高いものだった。オーケストラもエーネスの演奏に呼応してポテンシャルをフルに活かした演奏。この最後の最後に音楽史上屈指の美しさを宿しているとは言え、やや微温的な音楽を、ものすごい集中力でしかし伸びやかに聴かせてきり圧巻だった。ちょっとこの後これほどの演奏には出会えないかも。

ブラームスに2番は、歌心溢れるルイージの真骨頂。定期の二日間を終えた後ということもあり、今日はベートーヴェンも含めて、悪い意味ではないリラックスした感じがあり、各パートが伸び伸びと歌う幸せな演奏だった。特に2楽章、そして最終楽章は圧倒的にカンタービレな演奏でN響は良い指揮者との関係を紡げそうだなと感じた。