最近読んだ本から その21

並行読書するべきではなかったが、ぼくとしては、するしかなかった。

苦しい一週間だった。武田信子『やりすぎ教育』、中村健一『策略ブラック学級崩壊サバイバル術』。

二冊の素晴らしい本をお二人の尊敬する先生が送ってくださった。その思いに少しでも報いるには、ぼく自身もぼくのことを誠実に書くしかあるまい。

この二冊は、内容も、また書き方もほぼ真逆と言ってもよい。そしてそのことをある程度予測しながら、ぼくはわざわざ並行読書したのである。なぜならぼくは教職について以来、この二つの本が示す世界観の間を激しく揺れながら、今に至るまでフラフラ歩いていると自覚しているからである。

ぼくは武田さんの言葉を借りれば、間違いなくエデュケーショナルマルトリートメントに十分に加担してきた一人の教師である。自分自身の教師としての歩みを自分自身が十分に肯定できない。そして今、学校的なサイズの学びや狭量的な学力観に押し潰されそうな、娘うららを見ながら心底心を痛めている。

他方ぼくは、中村さんと比肩するような荒廃した学校現場の体験が原風景としてある。初任校でぼくの前にぼくのポジションを請け負っていた先生は、やっとの思いで這いだしたであろう次の学校から、ぼくら教職員一人一人にエロチラシを送りつけてきた後、狂死した。ぼくは初任校の学級崩壊の中で自分が生き残るために精一杯積極的に撤退したが、それはあの子達に対するネグレクトだったではないかという思いに今も苛まれている。

二冊の本を並行読書しながら、ぼく自身がどれほど引き裂かれているかを思い知らされる思いがした。つらい読書だった。分量的にはなんの苦もなく簡単に読める二冊だったにも関わらず。

 

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